問題2.回復不可能な汚染
花粉は風だけでなく、虫や鳥が運ぶこともあり、どこに飛ぶか分かりませんから屋外で栽培している限り防ぎようがありません。
遺伝子組み換え作物やゲノム編集で生まれたFI種(種が採れない もしくは使えない一代限りの種)の交雑は、後戻りのできない汚染と言えます。
農薬や化学肥料も、農地だけでなく川や海など、広い範囲の環境に影響を及ぼしますが、時間と努力によって回復可能な汚染です。
米の場合、一つの品種を作り出す時に、すでに一般に食べられている品種の他、≪青系134号≫とか≪奥羽341号≫といった遺伝的に複雑になっていない品種をよく使います。
それらをいくつも掛け合わせていくことで、その土地に合った品種に近づけていくのです。
そのため、都道府県の農業試験場ではこの≪青系〇号≫なども作り続ける必要があります。
しかし特にこれらの品種に交雑してしまうと、今私たちが食べている品種の種すら作れなくなります。
そして一度交雑したら、戻すことは100%不可能です。
その挙句、”特許権の侵害”で多額の賠償金が課せられます。
実際中南米各国で、古代文明の頃から共に歩んできた在来種や原種の作物が絶滅しています。
(全て遺伝子組み換え種と交雑してしまった)
全てを失った上に、支払不能な額の賠償請求。
元の品種を作っている側が”被害者”であるはずですが、不思議なことにTPPでは、被害者の方が裁判で交雑させられたことを証明しなくてはならない決まりになっています。
「え?!今までそこに存在しなかったものが交雑したのに?」
と証明も何もないくらい歴然とした事実であっても、特許権侵害裁判では
『なかったことを証明』
しなくてはなりません。
しかもTPPで取り決められた規定による裁判なので、日本の裁判所で争われるとは限りません。
さらに追い打ちをかけるように、自国の主食となる作物の種を失えば、海外から永遠に買い続けなければなりません。
しかも農薬・肥料をセットで・・・・。
問題3.種子・農薬・肥料のセット売り
遺伝子組み換え作物は、当初『農薬がいらない』もしくは『低農薬で作れる』というような話でした。
ところが現在は、多くの虫や病気が耐性をつけているので、低農薬どころかベトナム戦争で使用された枯葉剤レベルの毒性の高い農薬が必要になっています。
同時に大量の肥料を使わないと、従来品種と同等の質、収穫量も確保できなくなっています。
つまり
①種の値段が従来種の5倍~10倍する上に、
②毒性が高いこと理由に使用されなくなっていた農薬を使い、
③大量の肥料を使う。
明らかに必要経費が増えており、これでは小売価格が安くなるどころか、高くなる理由しか見つかりません。
問題4:日米二国間交渉⇒農業を知らない規制改革会議の決定
TPPと並行して行われた日米二国間交渉の交換書簡に驚くべき一文があります。
(なぜ報道されない?!)
『日本国政府が外国投資家等から意見及び提言を求め、
関係省庁等からの回答とともに規制改革会議に付託し、
同会議の提言に従って必要な措置をとる』
行政文書独特の言い回しで、ちょっと分かりにくいですが、まず
”国が外国投資家等から意見や提言を求める”
というのは一体どういうことでしょう!?
外国のだろうが国内だろうが、
投資家の意見で食料生産や安全管理を決める
というのは、どんな了見なのでしょう。
また通常、種子法のような『食料・農業・農村基本法』に含まれる法律を改正(廃止)する場合は
「専門家会議の意見を聞かなくてはならない」
と定められています。
しかし何故か今回は、専門家会議を一度も開くこともなく、いきなり”ローカルアベノミクスの深化会合 第四回規制改革推進会議”で提言されたのです。
(ということは外国の投資家等の意見や提言を聞き入れたのでしょう)
2016年10月6日同会議での提言
↓
2017年3月28日衆議院本会議にて可決
↓
同年4月14日 参議院本会議でも可決 よって種子法廃止法案が成立
↓
2018年4月1日施行
『外国投資家の意見を聞く⇒それを受けての規制改革会議の提言⇒それを実行するために必要な措置』
が”種子法廃止”だったということです。
違う言い方をするなら
『種子法があると投資家が儲からないから国が廃止した』
ということです。
国の安全保障にも関わる、これほど重要な法律の廃止法案が、専門家の意見を一切聞くこともなく(でも外国の投資家の意見は聞く)わずか半年で可決成立するのは信じられません。
この交換書簡には、法治国家の法を上回る強制力があるということでしょうか。
(どなたか法律に詳しい方がいらしたら教えて下さい)
しかもこの規制改革推進会議の議事録を見ると、少なくとも3人のメンバーが
「自分は農業に関して全くの素人です」
「これから勉強します」
などと言っています。
そりゃそうでしょう。
皆さん弁護士さんや新聞社の幹部、経営研究をしている大学の先生などですから。
しかし素人だという自覚があるなら、せめて会議に専門家を呼んで意見を聞くということをなぜしなかったのか・・・大いに疑問です。
(続きは⇒⑤ゲノム編集と遺伝子組み換えの違い)