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国産米が消える日③~奇跡の一粒


青天の霹靂を守る警備員!

何年もかけて新品種の開発研究を経て、めでたく

”都道府県の奨励品種に採用!”

となったら、いよいよ種を増やしていく作業に入ります。

いきなりたくさんの種は作れません。

増やしていく段階で、好ましくない特徴が出た系統は排除して、さらに質を安定させていきます。

一年目『原原種』

二年目『原種』

三年目 種を専門に作る『採取農家』

そしてようやく四年目に『一般農家』さんの元に届きます。

そして開発から原種までを作ってきた都道府県の担当者から、その品種の特徴などを聞きながら栽培しますが、最初は水入れや稲刈りのタイミングなどは計りかねることもあるようです。

青森県初の特A米 『青天の霹靂』もデビュー年より明らかに2年目、3年目の方が美味しくなっています。

『青天の霹靂』は病虫害の少ない栽培地域、土壌条件に限定しているので、使用する農薬や肥料は元々少な目です。

そこから2年目以降、さらに肥料を減らしていて、平成30年度は特別栽培米も登場しました。

※特別栽培米⇒節減対象にリストアップされている化学肥料・合成化学農薬共に50%以下で栽培されたもの。リストアップされていない合成化学農薬(例えば食酢など)であれば”栽培期間中不使用”と表記できます。

米の開発には前回のブログにも書いたように、膨大な時間も手間もかかります。

その上で高い品質を保ち続けるには、多くの方の技術と経験が不可欠です。

スーパーへ行けば、いくつもの品種のお米が山のように積んでありますが、奇跡のような確率で選抜されてきた一粒なのです。

ところがこの安くて安全で美味しいお米を支えてきた『主要農作物種子法』は昨年4月に廃止にされました。

※主要農産物=米・麦・大豆

そして同年12月30日にはTPPが発効。

それによって今年の米作りは大変な危機にあります。

農家さんが「TPP反対!」とシュプレヒコールを上げる映像は、ニュースでも取り上げていたのでご存じの方も多いと思います。

番組では関税上の優遇が開始されると、安い米や大豆、野菜などが増えることで、国内の農家が立ち行かなくなるとの言い方をしていました。

(全ての番組を確かめたわけではありませんが、多くの番組で価格差を取り上げていました)

しかし農家さんだけでなく、私たち消費者にとって、本当の脅威は

『種子の開発技術および情報全てを民間企業に無償で公開すること』

です。

昨今は全国各地で異常気象による災害も増えていますので、想定外のトラブルに見舞われることもあります。

なにせ1年に1回しか収穫できませんので、台風の直撃や日照不足が続くと、空を見上げて祈ることしかできません。

そうして作り上げてきた種子は、国の財産です。

国が都道府県に研究開発費を補助してきたことで、今の小売価格があります。

実際、民間企業が開発した米の種子価格は、都道府県が管理している種の5倍~10倍です。

しかし

「だから民間の開発意欲をそいでいる。無償で民間に公開しろ」

という理論はどうにも納得できません。

税金を投じて成し遂げられた技術ということは、私たち国民の財産でもあります。

民間企業が取り組む事業は、基本的に収益を上げることが目的です。

ですから自分たちが開発した技術は特許をとって保護し、売れ行きが悪ければすぐに生産を止めます。

非営利組織でない限り、それが企業としての正しい姿です。

しかしこの種子に関しては、それを許すと非常に大きな問題が起こります。

問題1.企業が種子を特許申請⇒交雑した農家に多額の賠償金を請求

例えば都道府県から譲り受けた種子の情報を手にした企業は、まずその種に少し手を加えます。

(さすがにそのままの種子を特許申請できませんから)

ゲノム編集なり遺伝子組み換え技術を使って、例えば稲の背丈を制限するとか、あまり元の品種の特徴に影響しない所をいじるとか、ちょっとだけ変えます。

そしてそれを新品種として特許申請します。

上手くいけば、元の品種に味も品質も似た米ができるかもしれません。

ところが元の品種に非常に似ている遺伝子を持っている新品種ですから、花粉が飛べば近隣の田んぼで簡単に交雑します。

すると企業は

「うちの品種は特許を取得している。お宅の米にうちの品種が交雑している。全て廃棄して賠償金を払うか、特許使用量を払え」と要求します。

この話は想像の産物ではありません。

作物は米でないにせよ実際に世界中でいくつも起こっています。

(続きは④迷走する会議


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