縄文人も経験した感染症は?~ウィルスたちの年齢


対岸の火事ではない

新型コロナウィルスも、当初は

「中国で原因不明の肺炎が発生」

という小さな一報でした。


TVのニュースで扱ったかどうかは記憶にありませんが、どちらにしろ多くの方が

「外国の話」

と受け止め、まさか現在のような状況になるとは想像もしていなかったでしょう。




今年の初め頃から、新型コロナウィルスに次ぐ要警戒感染症として、”二パウィルス”の名が度々上がっています。



2021年8月中旬頃、インドで子供が原因不明の感染症に罹っているとの報道があり気になっていましたが、9月に入り一人の少年が二パウィルスによる感染症で亡くなったとのニュースを目にしました。

(報道が先行していた原因不明の感染症が二パウィルスかどうかは不明)



これを遠い海外の、たった一人の少年の不幸なケースと見過ごすことはできません。



新種の4類感染症

このウィルスは1998年にマレーシアのニパで発見され、100人以上の死者を出しました。



その後1999年にシンガポールの感染者からウィルスが分離され、マレーシアの森にすむコウモリが保有するものと判明。


この時の感染者は養豚場の従業員で、マレーシアから輸入した豚から感染したため、感染ルートは

コウモリ⇒ブタ⇒ヒト

と予想され、新たな人獣共通感染症として、日本では4類感染症に指定されました。



初期症状は、発熱・頭痛・のどの痛み・筋肉痛など風邪や新型コロナウィルスとも重なる部分があります。

ただそこから急速に脳炎が広がり、発症から48時間で昏睡に陥ることもあり、致死率は50%~75%にも達します。


わずかな救いは、今のところヒトからヒトへの感染力はあまり高くありません



今回死亡した少年の濃厚接触者からも、幸い新たな感染者は出ていません。

医療関係者を含む200人以上の接触者の観察も続いているようですが、新たな感染者が出る可能性は低いと思われます。


ただ潜伏期間が5日~14日あり、無症状でも感染を広げる可能性があり慎重に観察しているのだと思われます。


ウィルス界の中では若手のコロナウィルス

「まだ新型コロナがおさまっていないのに、また次の感染症だなんて」

と思われるかもしれませんが、生物は常に感染症と共にあります。



ニパウィルスは発見されて20年ほどですが、発見されたのが約20年前であって、それ以前から存在していたと思われます。



例えば今回のヒトコロナウィルスも初めて発見されたのは1964年。

(奇しくも前回の東京オリンピックの年です)


これは電子顕微鏡の登場によって「初めて目にした」ということで、これ以前にヒトコロナウィルスが存在しなかったという意味ではありません。



このウィルスが記録のある限り、ヒトに致死的な影響を与えたのが2003年のSARSの時が最初です。

しかしウィルス自体は10万年くらい前から存在していたと考えられているので、過去にも大暴れしたことがあっても不思議ではありません。



ウィルスの年齢(?!)はいくつかの年に分離したウィルスの塩基配列を比較して、1年間の変異率を計算し、だいたいの年齢を割り出すのです。


木の年輪のように、なにか確たる痕跡があれば良いのですが、ウィルスの場合変異率の他、例えば地理的環境、気候変動、生物のコミュニティなどその他の要因も考慮して算出するので『だいたい』という感じです。




同じように計算した結果、インフルエンザウィルスの年齢は1億年とも言われています。

それに比べると、10万年のコロナはかなりの後輩です。


インフルエンザの場合、1930年代からワクチン接種が始まっているので、その影響も考慮したと思います。(本格接種は1940年代から。ワクチンも変異スピードに影響を与えるため)


ちなみに我々ヒトの祖先が、ネズミやリスなどのげっ歯類と枝分かれしたのが8000万年前と言われているので、それよりもはるかに古くから存在していることになります。


縄文人も感染したポリオ

ヒトの誕生よりはるか前から存在していたことを考えると、縄文人もインフルエンザやコロナウィルスによる感染は経験していたでしょう。



インフルエンザやコロナはなかなか痕跡は残りませんが、ポリオは骨に痕跡が残るため、感染が確認されたケースがあります。



ポリオはアメリカ大陸、ヨーロッパ、そして日本を含む西太平洋地区では2002年に根絶宣言がなされています。

縄文人も苦しめていたであろう感染症から、ようやく解放されました。



・・・と思ってたら最近になり、ポリオワクチンとポリオと同じピコルナウィルス科のウィルスに同時感染し、細胞内でウィルスの組み換えが起こったケースが報告されています。


「そう来たか!」と感心している場合ではなく、これにより強毒性が復活し、感染が再拡大するのではと警戒されています。



ウィルスの戦略は、常に我々の先を行くのです。というか我々より先に存在しているのですから、攻略経験は桁違いなのです。



どんなに医学が発展しても感染症はなくならない

ちなみに最初に挙げた新たに警戒が必要なニパウィルスは、パラミクソウィルス科というかなり印象的な名前の科に属しています。



この科には”おたふくかぜ”の原因となるムンプスウィルス麻疹ウィルスがいます。



麻疹は最近の研究※によると2500年ほど前に牛疫ウィルスから枝分かれしたことが判明したようです。

(※ロベルト・コッホ研究所/セバスチャン カルヴィナック-スペンサーグループによる)


となると縄文人は麻疹を経験していないかもしれません。



ただ牛疫は偶蹄類の動物には感染するので、鹿やイノシシが身近にいた環境下に存在はしていたでしょう。



犬ジステンバーも麻疹と同じパラミクソウィルス科のモルビリウィルス属ですので、非常に近くて、これも牛疫から枝分かれしたと考えられています。



人獣共通の感染症になる微生物もありますが、麻疹とジステンバーのように、宿主となる生物を決めている方が多いです。



決めていたのに、他の動物にも感染するようになるのは、例えばコウモリのように宿主が減ってきたとか、感染を効率的に広げてくれる宿主をみつけた・・なんていう理由かもしれません。



つまり医学の発展や衛生状況の改善が、必ずしも感染症を減らしてくれるとは限らないのです。



だからと言って希望がないわけじゃない

例えば国内最大級の集落跡である三内丸山遺跡は、1500年間に渡って最大500人も生活していたと考えられています。



人口は多少変動はあったにせよ、推古天皇や聖徳太子が生きた飛鳥時代から現在までに匹敵する長い時間を同じ場所で生活していたことになります。



ということはそれほど長い期間、

『集落が維持できなくなるほどの感染症は蔓延しなかった』

と想像することもできます。



文献での記録が残っている時代になると、感染症の蔓延で都を移さざるを得なかったことが複数回出てくるのに、縄文時代の感染対策にはどんな秘密があったのでしょう?


ウィルス感染だけでなく、エキノコックス症などの寄生虫によるもの、コレラ、赤痢など細菌感染症もあったと思うのですが・・・。



生薬かな?・・食べ物かな?・・・合掌土偶に祈った?

縄文時代の感染症対策が知りたいです。


関連ブログ⇒ジステンバーは麻疹の仲間

関連ブログ2⇒ワクチン代わりになる感染