
猫を”家畜”と呼ぶのは、ちょっと違和感があるかもしれません。
しかし牛・豚・鶏・馬・羊・犬などと並び、
人と共に過ごすことができる=家畜化された動物と言えます。
ただ、今例に挙げた動物と猫が、決定的に違うものがあります。
それは原種が残っていること。
よく『猫には野生が残っている』と言われることはありますが、野生種どころか原種が存在する貴重な種なのです。
いわゆる世界中で”猫”と言われているものは、日本猫でもシャムでもスコティッシュフォールドでも”イエネコ”です。
そしてイエネコ=リビアヤマネコです。
野生種リビアヤマネコの中で、人間に懐いた猫がイエネコと呼ばれるようになりました。
犬と同じように、様々な猫種がいて、ブリーディングが行われていますが、”原種”が残っているか否かというのは、健康を管理する上で非常に重要な意味を持ちます。
犬にしても、馬にしても、”原種に近いもの”は残っていても、”原種”が絶滅しているので、その種本来の遺伝子は判りません。
そのため遺伝的な疾患やその種の困った性質が出た時、治療や対処に必要な情報が十分に得られないことが往々にあります。
恐竜のように、気候変動による絶滅なら自然の摂理で致し方ない・・と感じますが、家畜としての能力を上げる為に改良した結果、原種が絶滅したのは大変惜しいことです。
もっとも100年前、まさか遺伝子解析が可能な時代が来るとは、誰も予想していなかったと思いますが・・。
犬のブリーディングの多くは、作業に適した犬種を掛け合わせて固定させるパターンが多いですが、猫の場合、たまたま生まれた稀少な特徴を残していくパターンが多いです。
その筆頭が長毛種の猫で、自然界では数パーセントしか生まれない特殊な個体同士を掛け合わせて固定させてきました。
ご存じのように、猫は暑い地域の出身です。
そこで生きるための特徴として、”毛が一定の長さになると抜ける”遺伝子を持っています。
長毛種にはこれがありません。
そのため、人間が手入れをしてあげないと、柔らかく細い毛はすぐに毛玉になり、皮膚を傷めます。
これは猫自身によるグルーミングでは防げないので、野生で生活する上では大変なハンディになります。
しかし長毛種は、人間のそばにいることで、活動地域を寒冷地にまで広げることができました。
長い毛の手入れをしてくれる人がいれば、新しい縄張り・エサを得るメリットがあることに遺伝子は気づいた?!わけです。
多様な環境、エサに適応することは、絶滅のリスクを減らす大きな戦略です。
こうして人が深く関わった猫種はいますが、犬ほど複雑になっておらず、かなり”野生”の血は残っているはずなのに、猫の世界も”肥満”が問題になっています。
本来『動けなくなるほど食べて太る』というのは狩をする動物にとって致命的です。
そもそも肉食動物は、エネルギーを脂肪に蓄えるという機能はほぼなく、基本的に筋肉と肝臓にグリコーゲンとして蓄えます。
あの瞬発力を発揮するには、脂肪からエネルギーを変換していては間に合わないからです。
だからこそ、猫は犬と違い、3日間絶食状態になると、肝機能障害を起こしてしまうのです。
そのため猫の遺伝子的に『あるだけ食べてしまう』ことは、かなり異常事態。
病気を発症してから、治療と減量の同時進行は猫自身も飼い主さんも負担が大きいので、早めの対処がおススメです。
正しい食餌と運動。
毎日の積み重ねは地味で、健康な時はその効果を実感しにくいかもしれません。
しかし長い目で見たら、健康への一番の近道です。