
以前のブログで、大豆は根に根粒菌を住まわせ、空気中の窒素を固定するので、やせた土地でも育つというお話を書きました。(⇒参照)
『そんな画期的なシステム、他の植物もやればいいのに』
と思うところですが、このシステムも実はいいことばかりではないんです。
根粒菌が窒素を固定するには、かなりのエネルギーを必要とするのです。
そのエネルギーを作り出すために、根粒菌は酸素呼吸をします。
しかし気体である窒素を取り込んで、地中に固定するにはある種の酵素が必要で、この酵素は酸素(O2)があると失活してしまうのです。
悩ましい問題です。
◎エネルギー産出に酸素呼吸は絶対必要
◎しかし窒素固定する酵素は酸素(O2)があると働けない
(酵素と酸素の字も紛らわしいですね)
そこでマメ科の植物は、さらに画期的なシステムを作りました。
根粒菌のために酸素(O2)を効率よく運び、かつ不必要な酸素(O2)は素早く処分する”レグヘモグロビン”という物質を登場させます。
貧血の時話題にあがる”ヘモグロビン”と名前が似ていますが、機能もほぼ一緒です。
赤みを帯びているのも似ていて、根粒部分を切ると、ピンク色の汁が見られます。
そもそも植物がもつ葉緑素(クロロフィル)の分子構造は、ヘモグロビンにそっくりです。
基本的な構造は同じで、真ん中に存在するのが鉄(ヘモグロビン)かマグネシウム(クロロフィル)かの違いだけです。
ですからヘモグロビンにそっくりの物質がマメ科植物に存在するのは、不思議なことではありません。
地球上で、動物は新参者です。
生命(植物プランクトン)は海で生まれ、海面の変動や陸地の隆起などを経て、藻類が地上に進出します。
これが地上の植物の始まりです。
当時は酸素がほとんどなく、光合成によって活動する植物の時代でした。
その頃、酸素は毒性のある廃棄物に過ぎなかったわけです。
ところが、酸素で活動する生命体(動物)が現れます。
先ほども書いたように、酸素を使っての活動は大きなエネルギーを生むので、動き回ることができるようになりました。
これを現在の世界で例えれば、ゴジラが出現したようなものです。
(あくまでも映画の世界での設定ですが、ゴジラは放射能をエネルギーにして暴れ?火を噴いたりします)
植物にとって動物の出現は、まさにそんな存在だったことでしょう。
そこで、植物は食べられないよう毒を蓄えたり、不味くする対抗策をとるものや、逆に魅力的な香りや味で花粉や種を運んでもらって仲間を増やす対策をとるものなど、環境に合わせて進化しました。
すると動物側も、不味くて消化の悪い葉っぱに対抗する為、胃を3つも4つも持って進化します。(ウシ科)
植物:「そうきたか~」
植物の生長点の多くは先端にありますが、そこを食べられると枯れるしかないので、今度は根本に生長点を作るものが現れました(イネ科)
こんな風に38億年も進化してきた植物。
その遺伝子を、地球上最も新しい”動物”(人間)が、チョチョッと10年ばかりいじったところ敵いそうにない・・と思うのは私だけでしょうか?