犬にもADHD(注意欠陥多動性障害)があるのか?


11,000頭以上の犬のデータ

先ごろ(2021年10月1日付・Translational Psychiatry)フィンランドのヘルシンキ大学チームより

「犬の12%~15%に高レベルの多動性・衝動性を。20%に高レベルの不注意がある」

という報告がありました。



ヒトにおいてのADHDは、全世界規模で2%~7%程度と言われていますので、犬はかなりの高率ですが、個人的には「そりゃそうだろうよ」というのが正直な感想です。

(;^ω^)




これは飼い主さんからのアンケートを、ヒトの基準に当てはめた結果なので、この結果を持って【犬の5頭に1頭がADHD】なんていう単純な話ではありません。



どうもADHDは、環境要因だけでなく遺伝的な要素が強いと言われているので、ヒトによって交配をコントロールされている純血種は、遺伝要因を観察しやすい動物モデルとして今回の研究につながったようです。



ADHDじゃないと生きられなかった時代

そもそもADHDは、現代の社会では生きづらさを感じるかもしれません。

しかし昔はADHDの特徴とされる”能力”を持っていないと生き残れなかったと考えられています。



例えば『注意散漫・集中力がない』というのも特徴の一つとされていますが、野生動物や自然環境の中で生き抜くには、『集中力の高さ』って命取りです。


注意を散らせて、時に衝動性を持って行動をしないと間に合わないことも多かったはずです。

現在も、ADHDは若い男性の比率が高いですが、そのような経緯を考えると当然でしょう。


人類を絶滅させないでつないできてくれた存在なのに、現代の基準に合わないからと社会から特別視されたり排除されるのは違和感があります。

ケアーンテリア

多動性と衝動性の高い犬?

犬種ごとの各データが出ていますが、犬を飼っている方には特に驚くべきものではないでしょう。


例えば多動性・衝動性に高いスコアを出した犬種には、ケアーンテリア、ジャックラッセルテリア、ジャーマンシェパードなどが挙がっています。



ケア―ンテリアはテリアの中でももっとも古く、小型動物の狩猟のパートナーとして長く活躍してきた犬です。

この犬の活動的で怖いもの知らずな大胆な性格は、猟犬として大変優れた能力ですが、ADHD基準だと”多動性と衝動性の高い性格”となります。(納得いかん!)



ジャックラッセルテリアもキツネ狩りの猟犬として活躍し、運動能力の高さと活発さ、好奇心旺盛で貪欲に追いかける優秀な犬です。


ジャーマンシェパードは警察犬や警備犬としてご存じのように、その攻撃性をあえて残している犬です。

本来は牧羊犬ですが、家畜を守るために戦うこともいとわない勇敢な犬です。

これを”衝動性や攻撃性の高いADHD”というのはどうでしょう?


ちなみに多動性と衝動性が最も低いとされた犬種⇒ラフコリー、チワワ、ミニチュアシュナウザー、プードル。


そして不注意のスコアが高い犬(不注意な犬)⇒ケアーンテリア、ゴールデンレトリーバーなど。

不注意のスコアが低い犬(不注意じゃない犬)⇒ミニチュアプードル、ボーダーコリー、シェットランドシープドッグ、ラブラドールレトリバーなど。




そもそもヒトの基準を犬に当てはめるのは無理があり、その犬種の良さを『障害』とされることに納得がいきません。



しかし論文の研究は遺伝的要因だけでなく、環境要因にもふれていて、これは多くの飼い主さんにも参考になる情報がありました。



運動量やお留守番の時間に行動の差が

ヒトのADHD研究で、運動量との相関性を研究したものはあまり多くありません。

あってもサンプル数が少なく、相関性を証明したと言えないものがほとんどです。



そういう意味では今回の犬の研究が、何らかのヒントになるかもしれませんが、やはり運動量が多くなるにつれ、衝動性や多動性は減るようです。

また留守番が8時間以上だと、衝動性・多動性・不注意な行動も増えるとあります。

(5~6時間のグループは8時間以上より上記行動が減り、3時間以下のグループはさらに減る)



簡単に言い変えれば、

『ストレスが増えると多動・衝動性行動が増え、運動によってストレスが解消されると減る』

ということでしょう。

(これも犬と共に生活していると「そりゃそうだろう」という話で、目新しい情報でもありませんが・・・)


飼い主の経験によって変わる?

ただ一つ面白かったのは、飼い主側の条件によって犬の多動性・衝動性が変わる点です。



犬を始めて飼った人の犬より、過去に飼育経験のある飼い主の犬の方が多動性や衝動性が高かったというのです。


最初は

「どういうことだろう?」と思いましたが、これは飼い主のトレーニングや飼い方の違いというより、初めて飼う人は「大人しい犬」や「飼いやすそうな性格の犬種」を選ぶ傾向にあるからと推察しています。



今回は遺伝的要因と環境要因を中心とした調査でしたが、個人的には多動性もなく、不注意でもない犬はその能力も魅力も半減しちゃうと思うので、行動をある程度変えるために運動を増やしたり環境改善をするのはともかく、ヒトのような薬での治療には賛成しかねます。