京都の夏の風物詩
ハモと言えば関西で人気の夏魚です。
水揚げが多いのは瀬戸内海や紀伊半島の南、また山口や長崎などでもよく獲れるそうです。
特に明石や淡路島はハモの産地として有名ですが、他県民にとっては京料理のイメージが強いのではないでしょうか。
ハモは生命力が強く皮膚呼吸ができるため、海から離れた京の都まで鮮度を保ったまま運べた貴重な魚でした。そしてハモは”骨キリ”という高い調理技術が必要です。
都には腕の良い料理人が集まってくるので、次第に”ハモ料理=京都”となったのかもしれません。
またハモは『梅雨の雨を飲んで旨くなる』とも言われているそうで、梅雨が明けるころ脂が乗ってきます。
それが丁度、大阪の天神祭や京都の祇園祭と重なり、お祭りに欠かせない名物となっているのでしょう。
しかしこのハモは、湿気を伴った暑さを乗り越えるにはぴったりの食材なのです。
ハモの薬膳的特徴
体の熱を冷ます作用はもちろん、胃・脾・肺・腎に作用します。日本の夏、特に盆地の京都は気温が高くなるだけでなく、湿気も高くなりやすい地形です。
そのため体が熱を下げるために汗を出しても、高い湿度の環境では発散させづらいのです。それで熱中症になったり、暑気あたりと呼ばれる様々な体調不良が起こりやすくなります。
そうなると食欲が低下し、冷たいものが欲しくなりますが、発散できない水分が体内に滞った状態だとむくみや下痢、場合によっては吐き気などを感じることもあります。
この状態で冷房の効いた部屋にいても、発散できない滞った水分は”冷え”を助長してしまい、ますます悪循環に。体のあちこちに滞った水分が様々な症状として表れます。
頭部に滞った水分は顔のむくみや頭痛として。
関節に滞った水分は関節痛として。
お腹に滞った水分はお腹の冷えや腹痛として。
それらを解消しようとして吐き気を感じたり、下痢になるのです。
こんな時、ハモを食べると腎がサポートされて滞った水分がおしっことして排出できるようになるのです。
夏場に起こりやすい膀胱炎や結石、そして夏の臓器心臓にも
夏場は膀胱炎や結石も増えますが、それも単純に脱水・・というだけでなく、腎臓にきちんと水分が回っていないことも原因になることがあります。
犬猫の場合、暑くても汗として発散させることができないため、水分の滞りは猶更注意が必要です。
腎臓をしっかり活動させることは、膀胱炎や結石を回避させるだけでなく、水を全身にくまなく回し、体を冷ましてくれるのです。
また皮膚炎を起こしたり、ポツポツが出たりするのも、皮膚近くで水分の滞りが起こっていると考えられます。そういう時は特に膀胱炎や結石などに注意です。
そして夏の臓器・心臓が不調になったり弱ってくると、むくみが出たり肺に水が溜まることがあります。
こういった時も余分な水分を腎に移動させるハモはお勧めなのです。
”心”に直接作用しなくても、弱った機能を他の臓器がサポートする。
一つの臓器だけでなく、体全体でバランスを取るという東洋医学的な考え方は、日々家庭でできる体調維持方法です。
ハモと相性の良い組み合わせ
いくら水をがぶ飲みしていても、それを処理する胃が弱っていると、きちんと受け入れができません。
夏場は食中毒が起こりやすいですが、ハモはそれをサポートする”脾”にも力を与えてくれます。
また呼吸(肺)も余分な水分を発散する大切な活動なのですが、湿度が高い環境ではスムーズにいきません。
そしてこの高温と高湿度環境によって大気中の常在菌も変化するため、喘息や気管支が弱い方の咳が長引くようなことも起きやすくなります。
冒頭の写真のように、ハモに梅のタレを付けて食べるのは定番ですが、この組み合わせはまさに汗の出過ぎを止め、暑気あたりや嘔吐、咳を止める組み合わせです。
犬は梅味をあまり好まないですが、イチゴで代用することもできます。
イチゴは暑気あたりや咳に作用するだけでなく、消化不良を助けて慢性の下痢に良いです。
(むしろイチゴの方が良い?)
梅のような収斂効果はないのですが、イチゴには肝臓の機能を養う作用があります。
強い紫外線で目の疲れを感じる季節でもあるので、肝を養うのも大切です。
東日本の意外なハモの産地
東日本ではハモを食べる習慣がないため、身近な店で目にすることがありませんが、もし見つけたらチャンスです。
青森県八戸市では年間10トンほどの水揚げがありますが、関西のハモと少し種類が違います。
そのため骨キリなどの技術がいらず、調理も簡単です。市場で開いた状態で売っているものをそのまま焼いたり、煮つけにしたり、一口大にして唐揚げにしても美味しいです。
丁度ウニやアワビ、ホタテなどの旬と重なるためか、地元ではそれほど食べられていませんが、この時期八戸へ訪れる機会があったら是非、八戸産ハモもお楽しみ頂けたら幸いです。
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