目に見えない抗生物質①


弊社工場のある八戸市内の病院で、バンコマイシン耐性腸球菌による院内感染が発生しました。

患者は60人以上に上り、今後3か月間、入院患者の受け入れを制限するような事態になってしまいました。

現代の院内感染は、病院ごとの管理だけでは防御できないのが実情です。

特に今回検出されたバンコマイシンの耐性菌は非常に深刻です。

バンコマイシンは、少し前に院内感染の原因菌として問題になったMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に効く、ほとんど唯一の抗生物質です。

参考ブログ⇒抗生物質とミトコンドリア

そのためその耐性菌が出たとなると、もう使える薬がありません。

健康な人なら保菌していても、さほど問題になりませんが、入院している方には負担が大きいです。

そもそもMRSAが出現した原因は、第三世代のセフェム系抗生物質の多用や誤った使い方が原因とされています。

”第三世代”というからには”第一世代”も”第二世代”もありますが、セフェム系全般の特徴として『広い細菌に効く』ということがあります。

第一世代のセフェム系だと『ケフラール』なんかは、未だに使われていると思います。

第二世代は『パンスポリン』ぐらい(最近あまり聞かなくなったかな)

そして第三世代は犬猫にもよく使われています。

飲み薬だと『メイアクト』『セフゾン』『フロモックス』などです。

注射液も多く、点耳液・点眼液(商品名:ベストロン)もあり、子供から高齢者まで、犬猫にも膀胱炎・皮膚炎・目や耳の炎症・歯周病など多くの症状に処方されています。

病院側としては使い勝手が良いため、一部関係者から『お土産処方』と揶揄されるほど気軽に出されています。

薬がなくても自己免疫力で十分戦えるような状態でも、抗生物質を出しておけば医療者も患者さんも”なんとなく安心”という使い方は、結果的に多くの耐性菌を生む原因になっています。

抗生物質とはその名の通り、生物由来の薬です。

つまり”生物”対”生物”の戦いです。

そのため何度も戦っているうちに、互いの攻略法をつかんでいくわけです。

それが『耐性をつけた』状態です。

すでにかなり前に、この戦いに限界があることは見えていたわけですが、人間は諦めずに抗菌効果のある合成物質を作り出しました。

これはキノロン系(商品名:オゼックス・ジェニナック・クラビット・タリビット)と呼ばれていますが、生物由来ではないので、抗生物質ではなく抗菌剤と呼ばれています。

しかし抗生物質を超えたはずの抗菌剤も、微生物たちはすぐに攻略してきました。

これもまた院内感染の原因菌ニューキノロン耐性黄色ブドウ球菌・緑膿菌として私たちの前に立ちはだかっています。

(今度は緑膿菌も耐性を付けてきた!)

抗生物質にしろ抗菌剤にしろ、薬として飲んだ時はまだいいのです。

口にした自覚がありますので。

近年の大きな問題は、目に見えない抗生物質の摂取です。

(②へ続く)