リン酸塩と腎結石の関係②~リン酸塩の種類と使う理由


色々な表記があるリン酸塩(リン酸ナトリウム)

保存料、酸化防止剤、pH調整剤という表記がされているものに、リン酸塩を使っているものは多いです。



またペットのおやつや歯磨きガムなどだと

『ポリリン酸ナトリウム』

『ピロリン酸ナトリウム』

『メタリン酸ナトリウム』

と表記されていることもありますが、これらは全てリン酸塩の一種です。




ポリリン酸とピロリン酸は単体で使用することはまずなく、他の縮合リン酸塩と組み合わせて使われます。


この両者は、どちらも腎臓で問題を起こすことがラットでの実験で分かっています。

ポリリン酸ナトリウムとピロリン酸ナトリウム

どちらもちょっとかわいい響きの名前ですが、油断してはなりません。(^_^;)



ポリリン酸ナトリウムは、腎結石が発生します。

一方、ピロロン酸ナトリウムは、血液中のカルシウムを引きつけ沈殿させます。

それによって腎石灰化症※を引き起こしました。


(※通常は炎症や梗塞、感染症が原因で腎実質にカルシウムが沈着するケースと、ホルモン剤などある種の薬の長期使用による影響で腎髄質が石灰化するケースがある。厳密に言うと後者を腎石灰化症と呼んでいるが、画像上で区別するのは難しい。




どちらもラットの餌に混ぜて与えた結果ですが、前回(①根拠の差)書いたようにラットでの結果を軽視してはいけません。


結石コントロールや腎臓の保護に、マグネシウムを制限した食餌が重要なのは否定しません。


しかし普段ご相談を受けていると

「治療が落ち着き、維持食に変えるとぶり返す」

というケースをよく聞きます。



中にはぶり返すのが心配で、ずっと療法食をお使いの方もいらっしゃいますが、これは全くお薦めできません。


最近は療法食がホームセンターやネットショップで購入できますが、本来獣医師の指導の下で食べさせるものです。

低マグネシウム食は、長期間続けると心臓など他の臓器にも影響を与えるので、心配だからと与え続けるのは絶対にいけません。必ず獣医師の指示に従って下さい。



それはともかく、繰り返す結石症に遭遇するたび

「実はリン酸塩が隠れた犯人なのでは?」

と思うようになりました。



体質的・遺伝的好発種というのは存在しますが、それだけでは説明できないケースがあまりに多いのです。


メタリン酸ナトリウム

リン酸塩の中では、一番よく使われているのがこれです。



これは食品はもちろん、ペットフードやおやつでも一番出番が多いと思います。



しかしラットによるたった1ヶ月の継続摂取で、尿細管の炎症腎臓の肥大という腎機能に重大な影響を起こすことが分かっています。



尿細管というのは、原尿が通り、その際ブドウ糖(グルコース)や水分、ミネラルを再吸収したり、体内での老廃物(尿素・尿酸・アンモニアなど)や余分な電化質や薬物など体外に排出したいものを分泌する場所です。



糖尿病になると尿からグルコースが検出されますが、この尿細管で吸収しきれない量が排出されるからです。



また腎臓の肥大というのも糖尿病の初期段階からよく見られる症状です。


ラットと人間の腎臓は見た目で似ていても、糸球体の大きさや構造、代謝するものの量に差があり

「ラットの結果は、人間がリン酸塩を摂取した結果と同じではない」

という意見があります。



確かに体の大きさが違えば、腎臓のサイズも、その内部構造も限界があり、尿の濃縮力も違うでしょう。



ただこの研究結果に注目しているのは、犬猫の腎機能は人間よりラットに近いからです。



このようにリン酸塩の仲間は、どれも腎臓を中心に色々な問題を起こす可能性があります。(骨の代謝障害、発育不全、副甲状腺機能の亢進(クッシング症候群など)、貧血なども)




それでも使うのは、大量生産する際、品質管理が圧倒的に容易になるからです。




肉や魚の加工品を作る際、リン酸塩を加えておけば、大量に仕入れて冷凍保存しても変色が防げます。

また乳化剤としても機能するので、脂の多い原料を合わせたい時、”状態を見ながら少しずつ混ぜる”というような技術もいりません。

結着も良くするので、湿度や温度による微調整もいらず、機械でバンバン形成しても失敗がありません。



特に魚・肉を加工する際、pHをどちらかに寄せないと腐敗を早めます。

一般に食品の保存性を高めるには、糖分や塩分などでpHを調整します。



しかしかまぼこやちくわなどの練り製品でも、原料の段階であまり味付けされていると加工しづらいので、多くの場合リン酸塩を使うのです。


実際、弊社でも製造委託工場を探している時

「魚ベースのフードを作りたい」

と言うと、

「無塩の魚原料を仕入れれば作れます!」

という工場がありました。



しかし『無塩』というのは食塩を入れてない練り原料という意味で、糖分やリン酸塩は含まれていました。

(糖分は保水性も保てるので、練り原料には必須でしょう)



そういうものが入ってない原料は

「流通していない」

と言われ、同時に

「原料に含まれる添加物(リン酸塩)は、表記義務がないから大丈夫。無添加フードとして販売できる」

と。


ちっとも大丈夫じゃないぞ!

この経験は『これは工場から作る必要があるぞ』

と危機感を抱いたきっかけとなります。



表記義務がないから大丈夫とか、そんなんじゃない!





昨今食品業界でも、リン酸塩表記を隠すため、アミノ酸”等”という表記で一括表記しているケースが横行しています。

食品衛生法では『アミノ酸等』には無機塩も使用できるので、違法ではありません。



アミノ酸調味料は、味を左右する”企業秘密”の最たるものなので、何を使っているかを公表する企業もないでしょう。

リン酸塩入りの魚原料しか手に入らないのなら、自分で作るしかない。

・・・てゆうか、魚ベースのフードって、工場で魚さばいていないの?



よく考えたら魚をさばく技術も、そのための包丁だけでも数種類必要です。


いくら小ぶりとはいえ40~50㎏もあるマグロと、鯛またはイワシをさばくのに、1本の包丁では不可能です。




やってみると非常に手間がかかり、大量生産には向かないことはすぐに分かりましたが、そう簡単には諦められません。


人間追い詰められると、悪魔のささやきが聞こえます。

(^_^;)




『手間がかからない練り原料を使えばコストも下がり、お客様のためになるんじゃないか?』

『リン酸塩が含まれているなんて分からないし、聞かれても答える義務はないし・・』




”お客様のため”と言っても、そもそもこのフードは誰のためのものなのだ?

犬の健康を願って作っているのであって、主語は『犬』だ!!


犬が健康でいれば、それは飼い主である人間のためにもなる。




そんなことに気付いた時、ある方にこんなこと言われました。


「だいたい青森県がいくら漁獲量が高い県って言ったって、そこまで魚獲れねえよ。それなのに大量生産技術が必要か?漁師が命がけで獲ってきた魚なんだから、いい加減な商品つくるなよ!」


これは今も肝に銘じています。




そもそも原材料に限りがあるのだから、手間を惜しまず丁寧に正直に作ること。


自分の犬に食べさせたくないものは作らないこと。


単純ですが、ぶれない商品を作り続けるには大切なモチベーションになっています。



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