油断大敵!Q熱・猫ひっかき病などペットからうつる感染症


原因となるものは細菌・ウィルス・原虫とさまざま

ペットから感染する可能性のある病気はいくつもありますが、その中から今日は細菌が原因になるものを三つ取り上げます。



まず一番メジャーである猫ひっかき病(cat - scratch disease)

これはバルトネラ・ヘンセラエが原因となる感染症です。


その名の通り自然宿主は猫なので、猫にひっかかれたり、噛まれたりすることでも感染しますが、実はダニが媒介することも多いです。

また犬も常在菌の一つとして保持しています。



感染者は年間10,000人ほどと推定されていますが、比較的暖かい地域、特に西日本での報告が多い傾向にあります。

また発症は秋から冬が多いのですが、症状は意外と多岐にわたります。




一般的には3日~14日ほどの潜伏期間を経て、噛まれたりひっかかれた場所と近くのリンパ節が腫れます。

発熱を伴うことが多いですが、これは長くても1週間程度で快復します。しかしリンパ節の腫れは数か月続くこともあります。



ただリンパ節の腫れを伴わないこともある一方、視神経網膜炎や急性脳症、心内膜炎を起こすこともあり、たかがひっかき傷、ダニに刺された・・では済まないことも。



バルトネラ属の問題として、培養に2週間ほどかかるため、最近はこの細菌に特徴的な遺伝子を増幅させて検出する方法が主流になっています。

ダニに刺されて発熱する病原体は他にもあるので、ターゲットに合った薬を選ぶためにも早い確定診断は大切です。


原因不明の発熱ほど不安なものはなく、特に感染症の場合、解熱剤だけでは対処が難しいでしょう。バルトネラ菌の場合は、テトラサイクリン系の抗生物質が有効です。



4類感染症 Q熱

狂犬病やE型肝炎、西ナイル熱、日本脳炎などと同じ、4類指定を受けているQ熱(query fever)。


これはコクシエラ・バーネッティが原因となりますが、潜伏期間が2週間~4週間と長く、主な症状はインフルエンザなどと見紛うような高熱や頭痛、筋肉痛など。

そのためすぐに原因が分からないことが多いためquery fever=原因不明熱性疾患と名付けられたそうです。



この細菌は犬・猫・家畜は不顕性感染(症状は出ないけど感染している)していることがあり、近年患者は増加傾向にあります。



意外にも都市部での感染が多く、犬や猫からの感染が多いのか・・と思いきや経路不明もあり今後注意が必要な感染症の一つかもしれません。




1935年オーストラリアの屠殺場の従業員が、次々と原因不明の発熱に見舞われ、この細菌が病原体として確定。


その後世界で広く認識されましたが、一般に動物の分泌物・尿・便・乳汁などの吸引によって感染します。

哺乳類の胎盤で多く増殖するため、家畜だけでなくペットの出産時にエアロゾルとなった物を吸い込み感染するケースも見られます。


また稀ではありますが、殺菌前の乳製品や生肉を食べて感染したケースもあります。

(そもそも殺菌前のそういったものを食べる機会が稀ですが)



細胞内に寄生して増殖するタイプの細菌なので、人工培地では培養することができません。そのため診断には抗体検査や核酸の検出を行います。



これもテトラサイクリン系の抗生物質を中心に投薬治療しますが、肺炎や肝機能障害の併発だけでなく、慢性化すると心内膜炎を引き起こすこともあり、初期治療が非常に重要です。

慢性化してしまうと快復まで数か月~年単位かかることも少なくありません。


パスツレラ感染症

これは動物の上気道に常在するパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)が原因となって起こります。

口腔内にもほぼ常在し、猫の90%以上犬でも50%~75%程度が保菌していると言われています。


そのためひっかかれたり噛まれるだけでなく、食器を共有したり、顔をなめさせたりすることでも感染することがあります。(咳やくしゃみでも)



パスツレラ菌の場合は、先の二つと違い感染すると数時間で腫れてきます

傷は膿が出て、発熱やリンパ節の腫れを伴うこともありますが、通常の分離培養で診断できるので、治療も開始しやすいのが特徴です。



死に至るケースはあまりありませんが、免疫力が低下している人が罹ると、気管支炎や肺炎、敗血症を起こすこともあり注意が必要です。


この感染症も、近年増加傾向にありますが、ペットとの生活が密接になったことも関係しているかもしれません。



ノミ・ダニ対策は感染症予防にもなる

これからの季節、ノミ・ダニ対策はされると思いますが、これはペット自身だけでなく人間の感染症対策としても重要なのは、ダニが媒介するものがいくつもあるからです。


刺されてかゆい思いをするのを防ぐのはもちろんですが、社会全体から見るとむしろ感染症予防として重要なツールなのです。



またフィラリア対策もそうですが、より多くの個体が対策することで、感染の拡大を防ぐことができます。



これから梅雨でダニが増えやすい時期。

また密になりにくい自然豊かなところへお出かけする方が増えている今、積極的に対策をしてくれる方がより増えることを願っています。


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