りんごろうと3匹は、大男の後について行き、一軒の家に案内されました。
「すまんがサルさん、裏に積んである薪を取ってきてくれんか?」
サルが快く応じると
「そちらのお犬さんは、ムロに保存しているリンゴと人参を掘り出してきて欲しい」
犬は
「得意とするところだ」
と言いムロヘ向かうと、りんごろうは
「私は何をすれば?」
と言いました。
大男は
「お侍さんは、刀の扱いは慣れていても包丁は持ったことがなかろう?」
りんごろうがうなづくと
「ではかまどの火加減を見ていて下され」
大男は大根・人参・ごぼう・根曲り竹・凍み豆腐をさいの目切りにし、煮大豆と共にだし汁の中へ入れて煮込みました。
その間ご飯を炊いているかまどでは、りんごろうの指示で、ウミネコが羽ばたいて火加減を調整しています。犬が背負っていた長芋は、手先の器用なサルがすりおろしました。
その様子を見ていた大男は、
「皆さん、良い仲間ですな」と朗らかに言いました。
部屋中に食欲をそそる匂いが充満し、3匹も我慢の限界です。
「早く食べたいな」
とサルが言えば、犬は
「”待て”の後のメシは格段に旨くなるぞ」
と言いました。
料理が並び、皆で囲炉裏を囲みました。
「いただきます!」
りんごろうと3匹は、すごい勢いで食べ始めました。
「美味しい!」
「皆で食べると余計に美味しい」
鍋も釜もあっと言う間にカラになり、犬はリンゴの芯まで平らげました。
ウミネコは
「りんごろうさん、私は満腹すぎて暫く飛べそうにありません」
と言ってサルと毛づくろいを始めました。
りんごろうと大男はその様子をニコニコしながら見ていました。
後に、この大男が掘った水路は、この地に多くの恵みをもたらしました。
りんごろうと村人たちは、大男への感謝を忘れないよう神社にお祀りしました。
その思いは今日まで続き、この地では節分の際「福は内、鬼も内」と言うとさ。
おしまい