神話や伝承の中の動物たち~アマビエ様とアヌビス神
- 青い森工房
- 2020年5月24日
- 読了時間: 3分
更新日:2021年1月18日

全国で話題の疫病除けアマビエ様
あのフォルムは、肥後国(現:熊本県)の役人が書き残した絵が元になっており、実際の大きさや質感の記載はありません。
本文には夜な夜な海に光が見えて、役人が行ってみたらアマビエが現れ
「私が現れたらこの先6年、諸国の豊作が続く。そして疫病が流行ったら、私の姿を描きうつして人々に早く見せよ」
と言ったと伝わっています。
・・・疫病除けというより、豊作を伝える妖怪というか神様だったのでしょうか。
現れたのは肥後国ですが『諸国の豊作』と言っている点で、非常に広い範囲を見守っている存在であることを伺わせます。
ところでこの絵を見た時、鳥のようなくちばし、うろこのような胸元、足はなく鳥の翼の先のようなギザギザ・・・
「これはウミウ?」
ウミウが頭から海藻を付けて、海上に上がってきた姿のように見えてしまいました。
ウミウは水鳥でも鴨などとは違い、羽毛がそれほど密ではありません。
そのため水から上がった直後は、胸元の毛がバサバサっとしていて、描かれた絵のように見える時があります。
羽毛が密でない分、濡れて重くなりやすいため、陸に上がると翼を少し広げて乾かしている姿をよく見ます。
その立ち姿は、絵に似ています。
また毛色も黒く見えますが、実際は光沢のある深いグリーンで、光が当たると艶やかに見えます。
繁殖期は海藻などを集めて、岩場に巣を作ります。
まあ普通はくちばしで咥えて集めるので、頭にワカメを付けたまま海上に上がってくるあわてんぼうは、そういないと思いますが・・・( ̄д ̄)
一般にウミウは、日本では九州北部以北を主な生息地にしています。
そのため熊本県あたりでは、比較的珍しい存在だったのではないでしょうか。
古今東西、昔から珍しい動物の出現は、神様の御遣いと言われることが多いので、アマビエもウミウの姿をした不思議な世界からのメッセンジャーかもしれません。

エジプト神話のアヌビス神
一方、”アマビエ”に字面が似ているアヌビス。
これは犬かジャッカルではないかと言われています。
(冒頭の写真参照。)
死者の魂を安らかに導き、来世へ速やかに運ぶため俊足だそうです。
そのため死者を送るための神官やミイラ作りをする職人が、犬のような被り物をするようになったとも言われています。
そこから転じて、”医学の神”とも。

予言と治療の神アポロン
アマビエ様とアヌビス神を足したような神様がギリシャ神話に出てきます。
それは音楽や芸術の神様として有名なアポロン。
アポロンの仕事は結構多岐にわたっていて、病を払う治療神、神託を授ける預言神としても出てきます。
日本の神話同様、ギリシャ神話の神様も結構人間的な側面がありますが、このアポロンに仕えていた白いワタリガラスとのエピソードもその一つでしょう。
アポロンと共に、時折白い鳥が描かれている時がありますが、その鳥です。
このカラスはアポロンと共に、神聖な存在として崇められていましたが、ある時アポロンの恋人の浮気を目撃します。
職務に忠実だったカラスは、それをアポロンに大声で報告します。
アポロンは激怒して恋人を殺してしまいますが、すぐに後悔。
そして今度は
「お前が余計な報告するからだ~!!」
と逆ギレして、カラスを白い鳥の仲間から追放します。
ワタリガラスにとっては、まるでもらい事故のようです。
この事件をきっかけに、カラスは黒くなってしまったのですが、艶やかに黒光りする羽は太陽神アポロンに仕えていた名残だとも・・・。

神話に出てくる動物は、それだけ古くから人間の近くにいた証拠。
伝承や言い伝えの中には、何らかの教訓を分かりやすく伝えるために、身近な動物を登場させていることもあるのでしょう。
神話や伝承を通して動物との関わりを考えるのも、また一興です。
#神話 #青い森工房 #犬 #アマビエ #ウミウ #エジプト神話 #ギリシャ神話 #アヌビス #アポロン #ワタリガラス #春夏秋冬