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冬レシピ開発秘話


「冬レシピと春レシピ、どっちがいいですか?」

初めてご利用になる方から、よく聞かれます。


カウンセリングやイベント等で、ワンちゃんが目の前にいる時は、様子を観察しながらいくつかの質問をさせて頂き、可能ならばちょっと体に触らせて頂きます。


体のラインや肉付き、皮膚の状態、体の温度、舌の色など見ると、冬春どちらが向いているか、どんなトッピングがオススメかをお伝えすることが出来ます。

しかし多くの場合、まず冬レシピをお薦めします。

別に、春レシピが特殊な環境の子にしか合わない・・というわけではありません。

実はどちらかと、食いつきは春レシピの方が良い・・というわんちゃんが多いかもしれません。

青森県は”冬”が長く、その分夏は短いです。

一年の半分が”冬”という感覚です。

そういう土地柄ですので、必然的に冬食材は豊富で長期間あります。

例えば”大根”。

おでんやブリ大根など、”冬野菜”を代表するイメージだと思います。

(サラダにするとおいしい春大根もありますが)


しかし夏場、食欲が落ちた時に、おろし蕎麦とかしらすおろしなど美味しいですよね。

この時期の大根は青森県産が多いです。

そのため青森県産品でフードを作ろうとした時、一般的な季節感と少しズレがあることは認識していました。

最初は予算のことは考えず、単純に県内で一定量集められる食材をピックアップしていきました。

・・するとまあ、あまりに豊富な食材に驚いてしまいました。



牛・豚・鶏・鴨・馬・羊・イノシシ・・・牛は脂の美味しい黒毛、赤味が美味しい短角どちらも飼育されていました。

豚や鶏は、飼育基準の厳しさが国内トップクラスの健康なものがあることも知りました。

魚の種類も、びっくりするくらい豊富でした。

アザラシ!までありました。(害獣で問題になっているそうですが、クセが強く人間には人気がありません)

とにかく犬のために最も良い食材、組み合わせ、比率を作っていきました。

するとあまりに食材が多すぎて、冬レシピだけでも4種類も出来ちゃいました。

それから各農家さんに食材を供給頂けるかの交渉や見積もりなどを出して頂きました。

やっぱり価格的に「ちょっと無理だな」というものも出てきましたが、試作してみると加工の技術的な壁が出てきた食材もありました。

下処理や加工段階で、ある種の添加物をちょっと使えば乗り越えられる壁もありましたが、それをやっちゃったらウチの存在意義がなくなります。

またアザラシ肉は栄養的に非常に良いものですし、脂質も魚油に近く、机上では「いいなあ~」と思っていました。

しかし試作中にとんでもない匂いが発生し、いくら加工場が集まっている団地とはいえ近所迷惑になり、何より作業している人間が臭すぎて部屋にいられません。

「ダメだこりゃ~」


こんな失敗を繰り返しながら、レシピを絞っていきました。

また県内であまり食べる習慣がないため、水揚げがあることを知らない魚もありました。

漁師さんと夏レシピ用の魚の相談をしていた時

「ハモとかは(犬に)使えないの?」

と聞かれた時はぶっ飛びました。

ハモ?!そんなの青森県近海で揚がるの?

「うん。だけど県内じゃ人気ないから、全部県外に出しちゃってる」

・・ハモかあ。高そうだし、骨切りとか大変そうだけど薬膳的にバランスの良い食材なので、使いたいなあ。

ふとバブル期に、都会から業者が舌平目を買い付けに来た時の逸話を思い出しました。業者:「舌平目ありますか?」

漁師:「あるよ。そこ」

漁師さんが指差した先には、地べたに散乱している舌平目。

漁師さん曰く「肥料にでもするのかと思った」

フランス料理が流行っている都会では高級食材なのに、青森県の港では『美味しくない魚』とのことで(苦笑)網にかかっても捨てていたのです。

薬膳的にバランスの良い食餌とは、

〇三つの帰経 上焦(肺・心)中焦(脾・胃)下焦(肝・腎)を含む食材がバランス良く使われているか?

〇五味がバランス良く含まれているか?

なども考慮します。

「犬の食餌に味があってはダメじゃない?」

と思われるかもしれませんが、五味というのは五臓の働きとつながっているという考えに基づいていて、単純に”甘い”とか”しょっぱい”という意味とはちょっと違います。

玄米が”甘”

りんごが”酸甘”、というのはなんとなく分かると思いますが、例えば

牛肉、鶏肉、鮭、まぐろも”甘”

豚レバーは”甘苦”

昆布やわかめ、もずくなどは”鹹”

”甘”とは栄養を吸収しやすい環境を作る働きがあると考えられ、”鹹”はミネラルが豊富・・と考えます。

ミネラルは必要量と中毒量の幅が狭いので、多ければ良いというものでもなく、他のビタミンや栄養素とのバランスによって吸収率にも差が出てきます。

そのため単純に〇mg含まれればOK!とはなりません。

『ミネラルは吸収が悪いから多めに入れた方がいい』という考えもありますが、どんな物も代謝するには肝臓や腎臓に負担がかかり、代謝されずに蓄積されると、他のミネラルの吸収を阻害したり毒性を持つものもあります。

栄養素を数字だけでバランスを取ろうとすると、そういうことが起こります。

〇吸収しにくいものは、吸収しやすい形や吸収をアシストする栄養素と組み合わせる。

〇吸収した後、体内で利用しやすい環境を整える。

本当にバランスの良い食餌は、そういうものだと考えて春夏秋冬を作っています。

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