今年も、各地で熊の出没情報が出始め、先週は弊社工場のある八戸市でも目撃されています。
その昔『熊に出くわしたら、死んだふりをしろ!』と言われたものですが、最近は絶対しないようにと呼びかけられています。
とは言うものの、やはり子供の頃から言い聞かされた話は、なかなか頭から離れないもの。
熊=死んだふり
とは、一体どんな根拠だったのか、誰が言い始めたのか・・・
いや~、調べてみてビックリ。
その根拠は、たった一件の報告がきっかけ。
それも古代ギリシャの・・・。
この報告を残したアイソーポス氏は、他にも自然界の様々な観察記録を残していますが、まさか”熊”の報告が、これほど長い間、しかもその時代には存在すら認識していたかどうか分からない極東の国で語り継がれているなど思いもよらなかったでしょう。
確かに生物界には、”死んだふり”で捕食者から身を守る動物がいるのは事実です。
そしてアイソーポスさんが、この方法で熊から身を守ったのも事実でしょう。
しかし、この方法の有効性を確かめる術もなく、今日まで信じられてきた不思議。
その間、多くの専門家が
『死んだふりの有効性に根拠はない。山へ入る時は、鈴などを持って、出会わないようにすること。万が一出くわしたら、刺激しないように、ゆっくり後ずさりして逃げること』
と言っているにも関わらずです。
この手の話は、結構あって、例えば犬の世界で有名な話だと
『妊娠期に高濃度のビタミンCを与えないと、股関節形成不全の仔犬が生まれる』
股関節に関わらず、多くの関節形成・維持に、ビタミンCが重要な役割を果たしているのは間違いないと思います。
しかし、この実験の詳細を見ると
『過去に股関節形成不全の仔犬を産んだことのある一頭の犬の妊娠期に、通常の食餌より多めのビタミンCを与えたら、今度は股関節形成不全の仔犬がいなかった』
となっています。
最初はたった一頭の報告からだったとしても、本来ならば、有効性を確かめる為に、さらに頭数を増やした検証をしたり、他の研究者が再現性を検証したりして、初めて採用されるものです。
しかし、こちらの話は先ほどの”熊”の話と違って、
『検証したら即刻命に係わる!』
ものでもないのに、今の所、追加検証はなされていません。
さらにこの股関節形成不全に関して言えば、約7割は遺伝性とされています。
母犬の遺伝的要素はどうだったのか、相手のオスの遺伝的リスクはどうだったのか・・・この場合、それらの条件が非常に重要となりますが、その辺は特に考慮されていません。
「でもまあ、ビタミンCなら余計に与えても害にはならないだろうから、加えておけば安心じゃない?」
という心理は、私もいち飼い主として良く理解できます。
しかし科学技術が発達したがために、一言で”ビタミンC”と言ってもその質は様々です。
ものによっては、過剰摂取が必ずしも”安全””無害”と言いきれなくなったのが、悩ましいところです。
森のクマさんの生活環境が、時代と共に変わってきたのと同時に、最近はクマ自身も
”人を恐れない”性格に変化してきているとの報告があります。
物事の変化は、一面だけを見て判断せず、多角的に見なければ・・・
そして思い込みや、知識だけに慢心してはならない・・・
”熊出没”ニュースをきっかけに、改めて気を引き締めた次第です。