大豆は畑のお肉・・そんな話をお聞きになったことがあるかもしれません。
タンパク質を豊富に含み、良質の脂質も含みます。
大豆に限らず、豆類は全般に栄養価が高いことが知られています。
その理由は、豆類の発芽システムに秘密があります。
どんな植物も、発芽する際のエネルギーに炭水化物を利用します。
しかしその植物の育つ環境によって、より効率の良いエネルギー源を選択してきました。
豆類は養分の少ない(=窒素が少ない)環境でも育つよう、種子に炭水化物だけでなく、タンパク質(=窒素)も持たせるよう進化しました。
そして無事発芽しても、根に土中の根粒菌を住まわせ、空気中の窒素を固定してもらうシステムも作りました。
これによってやせた土地でも、確実に次の世代を残せるようになったのです。
また脂質も重要な発芽エネルギーとして利用しています。
脂質は炭水化物に比べると、エネルギー効率が良いため、
①成長が早い
②種子の大きさが小さくて済む
という利点があります。
①が分かりやすい植物の例として、ひまわりやトウモロコシがあり、②の例としてゴマや菜種があります。
ただ、脂質を多く蓄えるには、それなりのリスクがあって親株に負担がかかります。
そのため、どの植物もそれぞれの環境に適応するため、最も良いバランスを編み出したわけですが、大豆のバランスは我々人間を含む動物界にとって絶妙な配合となりました。
実は数年前、大豆の栄養価の高さに、頭を悩ませたことがあります。
お豆腐屋さんから毎日大量に出るおから。
それをドッグフードに使えないかと検討したことがあります。
おからの栄養価の高さは、周知の事実。
高タンパク低脂肪、食物繊維も豊富。これを使わない手はないと思われました。
”豆類は鼓腸の原因になる””胃腸の弱い個体には与えないよう”と言われることもあります。
しかし十分水に浸漬させた後、調理(火を通す・砕く・つぶす等)すればあまり問題になりません。
水に浸す時間は、水温にもよりますが、水温15℃で15時間がひとつの目安です。
夏場(25℃くらい)でも最低一晩は必要です。
豆を家庭で煮炊きする機会は減っているかと思いますが、この浸す過程を省くと火を通す時間を増やしても上手く炊けないどころか、人間が食べても消化不良を起こすこともあります。
その点、おからならこれらの問題を全てクリアしていて安心です。
ところがですね・・栄養価が高すぎるが故に、非常に劣化が早い。
そういえば昔、お豆腐屋さんで買ったおからを甘辛く炒め煮にしていましたが、翌日になると酸っぱい匂いがしてました。
たいていのものは、火を通せばそれなりに日持ちします。
しかしおからに至っては、空気中の微生物たちにとって、豊富な栄養を供給してくれるこの上なく居心地が良い場所のようです。
どのくらいのスピードで処理をすれば、微生物の繁殖が防げるかというと、豆乳を絞ると同時におからを乾燥機に投入して一気に熱をかけて水分を飛ばす必要がありました。
こうなると、お豆腐屋さんにベルトコンベアー付きの大がかりな装置が必要になり、個人商店では現実的ではないと分かり断念しました。
豆類や穀物、植物油の原料となるのも、”種子”です。
植物が生き残りをかけて、動物たちに食べられないよう、病気にならないよう等いくつもの困難を乗り越えられるよう進化してきました。
そのため生のままでは、毒性を持つものが多いのですが、火や水を使うことで私たちに大きな恵みを与えてくれるスーパーフードです。