常識の行方(遺伝子vol.2)


常識とは、『時代や地域によって変わるもの』というのは多くの方が認識されていると思います。

しかし”科学の常識”とは、それを覆すようなデータが証明されない限り”常識”であり続けることが、しばしば起こります。

多くの研究者が注目し、様々な検証がなされているが、”反証することが難しい”という研究であればまだいいのです。

しかし時に”あまり注目されない””重要と思われない”あるいはあまりに偉大な人物の研究であったため、時代が変わっても検証されることがなく放置されたため”なんとなく常識”になってしまったものも多々あります。

その有名な一例が『鶏卵を食べると血中コレステロールが上がる』説。

これは100年以上前にロシアの研究者が、ウサギに鶏卵を食べさせた検証結果だったことはあまり知られていません。

ウサギのような草食動物に、本来食べるはずのない卵を食べさせたら、体に異常が起こるのは当然でしょう。

ウサギの遺伝子には卵を消化する能力も、処理する能力も想定されていません。

開腹手術をすると、まずお腹全体を覆うように巨大な盲腸が現れるような消化システムを持った生き物です。

ウサギに限らず、草食動物は膨大な量の微生物に消化機能を助けてもらっています。(もし良かったらこちらもご参照ください)

そしてその微生物の重要拠点が盲腸です。

(前回のブログ⇒こちら

盲腸もまた、長年の”常識”によって不当な扱いを受けてきました。

しかし近年の研究で、盲腸の先にぶら下がっている虫垂の内部が、免疫細胞で満たされていることが判明。

その特徴が分かると、虫垂炎が免疫活動の活発な10代~20代に比較的起こりやすのも、無関係ではないと考えられます。

また食中毒や抗生物質など薬の使用で腸内細菌が著しく減ったりバランスが崩れたりすると、虫垂から必要な微生物群が供給されることも分かってきました。

それを聞くと、これは無用の長物どころか、滅多なことでは取ってはいけない器官です。

(しかし強い炎症が起きた場合、きちんと処置を施さないと命に関わるのでお医者さんに急ぎましょう)

そして草食動物と対極にある肉食動物には、虫垂がありません。

最も身近な肉食獣・ネコにもありません。(盲腸の先に似たようなシッポ状のものがありますが、リンパ小節の集まりです)

しかし、イヌにはあります。

ネコ科の多くは、常に新鮮な獲物を捕食するので、消化途中の草や穀物と共に腸内の微生物も摂取できる環境にあること。

それに比べ、イヌ科は集団で狩りをし、強い個体(場合によっては仕留めた直後にネコ科に横取りされることも)でなければ新鮮な内臓にありつける確率が低いこと。

また食べ残した肉を保存したり、持ち帰ったりして、多少腐りかけたものも食べる習慣があること。

この食習慣の違いを見ると、イヌは必要に応じて虫垂から微生物の供給を受ける必要があるのが分かります。

退化した器官の痕跡だと長く考えられてきた虫垂。

実際は退化だったのか、進化だったのか、それは遺伝子に答えが書いてあるのかもしれません。

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