脂質代謝異常や貧血にも腎臓ケアが大事なわけ


結石だけじゃない

”腎臓”というと”結石”が代表的で、犬も猫も年齢に関わらずご相談数の多いお悩みです。


一方で、脂質代謝異常貧血なども、実は腎臓に原因があるケースもあります。



脂質代謝異常(高コレステロール血症や高脂血症など)は、一部の犬種が遺伝的に多いとされていますが、『なぜその犬種に起こりやすいのか?』という理由は、仮説はあっても解明されているとは言えません。



例えば”脂質代謝異常”と言っても、内情は様々でミニチュア・シュナウザーなどはトリグリセリドが高い傾向にあります。

その原因の一つとして脂質代謝酵素”リポタンパクリパーゼ”の欠損が疑われています。



M.シュナウザーは膵炎好発種としても有名ですが、一般に高トリグリセリド血症を含む高脂血症は急性膵炎を起こすリスクが高くなります。しかし食餌や感染症が原因ではない膵炎の予防は簡単ではありません。



そして脂質の代謝に重要な役目を担う酵素の欠損や低下が起こると、トリグリセリドが高く血中に存在するだけでなく、尿タンパクと相関性があることが分かっています。

M.シュナウザーは結石好発種とも言われますが、腎臓や尿トラブルが起こりやすいのもこの酵素欠損と無関係ではないかもしれません。



人間とは逆の高脂血症判断基準

一方でM.シュナウザーは、悪玉コレステロールと称される低密度リポタンパク(LDL)が低い傾向がしばしば見られます。



実はこれは犬としてはあまり良くなくて、人間以外の多くの哺乳類では高密度リポタンパク(HDL=善玉コレステロール)の増加が治療の対象となります。

だからまあ、悪玉とか善玉とか人間視点の命名で、本来どちらも存在してくれないと困る存在で、比率の問題です。



高脂血症は職業病?

同じようなタイプの脂質代謝異常を持つ犬種として、ブリタニースパニエルがいます。

これはスパニエル種の中でも最も古いと言われ、フランスでは鳥猟犬としては未だに一番多いとのこと。



優秀で頑強な体を持つことから、イングリッシュセッターやイングリッシュポインターとも交配されています。


そして純血種では珍しいくらい、遺伝病が少ないのも特徴で、それも交配が進んだ理由の一つかもしれません。



そのためこの脂質代謝異常が、ほとんど唯一の弱点と言ってもよいくらいですが、M.シュナウザーもこのブリタニーも、『猟犬らしいアクティブさ&強い体』というのは血中の脂質の高さも関係しているのではないかと考えています。



なぜなら心臓や血管内皮組織のエネルギー源の70%は脂質だからです。


つまり”猟犬”という仕事を続けるために、すぐに脂質を取り込める体内環境を作ったのではないかと・・という見方もできるのです。




そう考えると家庭犬として飼われている場合も、本来の仕事相応の運動量や頭の体操が必要になるのは当然です。


犬種の特徴とは、姿かたちだけでなく、どんな仕事のために求められてきた犬種か・・というのが大切です。狩りは必要なくなっても、体の機能はそう簡単に変わらないのですから。


腎機能の低下で貧血が起こるわけ

白血病や臓器の腫瘍による貧血、寄生虫による鉄欠乏貧血、ねぎ類を食べたことによって赤血球が壊される溶血性貧血などが有名ですが、骨髄で赤血球が合成されるホルモン(エリスロポエチン)が不足することで起こる貧血があります。


このホルモンは腎臓で作られるため、慢性的に腎機能が低下した状態になるとホルモンが不足し赤血球が合成されなくなります。

こういう場合の貧血は、鉄分を補給しても効果がなく、ホルモンの補充が必要になります。


『貧血=鉄』という印象が強いせいか、食餌のご相談でも

「貧血ぎみと言われたので鉄分を多く摂らせたい」

という話はよく出てくるのですが、腎臓病、または腎機能の低下がある時は注意が必要です。

なぜなら腎臓になんらかの問題を抱えている時は、すでにミネラルのバランスを崩しやすい環境で、あるミネラルを増やしたことで他のミネラルの排出が進んでしまうこともあるからです。


まとめ

脂質代謝異常⇒脂質制限

貧血⇒鉄分補給


という単純な構図にはならないケースを取り上げました。



また特定の犬種で起こりやすいと言っても、個々の体質は異なります。

特に脂質制限は、量を制限すれば良いわけでなく、脂質の”質”を見直す必要があります。


腎臓に起因する脂質代謝異常にも、魚などに多く含まれる多価不飽和脂肪酸(DHA・EPA)は、良い影響があると考えられています。


今回は脂質と腎臓の関係が中心でしたが、もちろんタンパク質の”質”も重要です。


※脂質についての関連記事は⇒脂質と大腸細菌叢