犬や猫にもうつる人の結核菌


象も人と同じ結核菌に罹る

千葉県市原市のアジアゾウが立て続けに2頭亡くなり、他の4頭も体調不良が続いているとのこと。



亡くなったゾウはどちらも30歳と35歳。アジアゾウの寿命は80年といわれており、どちらも加齢によるものとは考えられません。



少し前から食欲不振や下痢などの症状があったとのことで、他のゾウも同じような症状であることを考えると、何らかの感染症かもしれません。




市原のケースは食中毒の可能性を疑っているとのことですが、ここ数年”食欲不振”や”下痢”といった症状を伴う、ゾウの結核感染が発生しています。



昨年の夏も、東京の上野動物園で飼育されているアジアゾウ(23歳)の感染が判明しましたが、治療の結果回復しています。



一般に結核菌(マイコバクテリウム ツベルクローシス/Mycobacterium tuberculosis)は紫外線に弱いとされているので、屋外飼育されているゾウを見に行ったくらいでは感染する可能性はないと思われます。


ただ飼育員さんに感染したケースは海外でも報告されているので、ゾウが来園した際には結核検査をするようになっています。



ただPCR検査のためにあの長い鼻に綿棒を突っ込むのは無理なので、鼻腔洗浄をした際に採取した検体を培養しているようですが、世界的には抗体検査が主流になりつつあるようです。

発病まで潜伏期間が半年から2年もあるので、陽性になったゾウは隔離が必要になります。



一般に”結核”というと咳や痰などの症状が出る肺結核のイメージが強いと思いますが、

・結核菌を含む痰を飲み込んだ

・血液やリンパ液に乗った結核菌が腸に届く

といった経路で腸に病巣を作ることもあります。


この場合、発熱や倦怠感、食欲低下、体重減少に加え、下痢や下血、腹痛といった腸炎のような症状になります。

人から犬の感染例もあり

実は日本で、世界からも注目された極めて貴重な症例があります。


世界的には結核感染がほぼ見られなくなっているのに対し、日本では毎年17000人以上の新規感染者が発生しており、約10%の方が亡くなっています。


罹患率は人口10万人あたり13.9人にもなり、これは欧米の2倍から5倍にもなります。

これでも年々減少傾向にあるのですが、世界的には”結核蔓延国”とみられています。




そんな中、人から犬(3歳のミニチュアダックスフンド)に感染したと思われるケースが確認されたからです。

アメリカでも感染報告はありますが、犬の生前に感染確認できるのは世界的にも稀な例です。



いくつかの意味で貴重なケース

なぜなら

①結核自体がまれな病気になった

②犬や猫は、感染してもあまり症状が出ず、亡くなった後の剖検で結核感染だと判明することがほとんどで、生存中に確認できるケースがまれ。

③犬や猫は、結核菌の感受性が低いので、人からうつること自体が稀。


と”稀”がいくつも重なったのです。


このケースでは飼い主さん家族の中に結核でご入院された方がいたそうです。

そして退院して数か月後に犬に症状が出たとのことで、

ヒト⇒イヌ

という感染経路ではないかとなりましたが、潜伏期間の長い細菌なので、

イヌ⇒ヒト

という感染経路も否定できません。


犬同士、猫同士の感染はほぼないとされていますので、可能性としてはやっぱり

ヒト⇒イヌ

の方が高いと思いますが、2類感染症に指定されており、空気感染する結核の特性を考えると、残念ながら犬は安楽死という悲しい選択しかありませんでした。



猫にも注意すべき点が

犬より猫の方が若干感受性が高いとされており、完全室内飼いが増えてきて、猫と人間の距離が近くなった現在、注意深く観察すべき人獣共通感染症の一つかもしれません。




幸い、人には良いワクチンもありますので、人が感染しなければ心配はありません。

ただ万が一感染が確認されたら、ペットの検査も考える必要があります。



いまのところ人から猫の感染例は報告されていませんが、

報告されていない=感染がない

ということではありません。


先ほども書いたように、犬猫は感染していてもほとんど症状が出ないため、年齢や持病によっては気づかないままかもしれません。



どちらにしろ、人間の健康管理がペットの健康管理にもつながるという貴重な例だと思います。