
原因となるウィルスは約200種
いわゆる『風邪』と呼ばれる症状を引き起こすウィルスは200種ほどあると言われていますが、なぜ風邪の症状はどれも似ているのでしょう?
腹痛や胃腸症状を伴うものであれば
「お腹の風邪ですね」
と言われますが、頭痛、発熱、喉の痛みなどから始まり咳・鼻水・・と程度の差はあれどれも似たような経過をたどります。
”風邪薬”と呼ばれるものはあっても、ウィルスそのものに対処する薬ではなく、解熱剤や咳止めなど症状に対処する薬です。
だからこれまでインフルエンザ以外は、ウィルスを特定する検査など実施されたことがなかったのです。
なんならインフルエンザも
「抗ウィルス薬を使っても、症状改善までの時間があまり変わらない」
という報告も上がってきているので、昔お世話になった主治医に
「たいして効かないけど処方する?咳止めと解熱剤だけでいいよね」
と聞かれたことも(;^ω^)

なぜ風邪の症状は似ているのか?
ウィルスは違っても、なぜ症状は同じような感じなのでしょうか?
インフルエンザでさえ、一般的に『風邪のひどいやつ』とか『熱の高い風邪』と言われます。
ただインフルエンザ陽性でも、さほど高熱にならない人もいれば、インフルエンザ陰性でも39℃近い高熱になる人もいます。
つまり抗原検査をしないと、インフルエンザかそれ以外のウィルスかは、見分けがつかないことも多いわけです。
実際、日本以外のほとんどの国では、インフルエンザかそれ以外のウィルスかの判断は、普段健康な人が罹った場合あまり重要視しません。
その証拠に、抗インフルエンザ薬であるタミフルの使用量は日本が世界一です。なんと生産量の2/3を日本国内で使用しているほどです。

抗インフルエンザ薬があまり重要視されないのは、いわゆる”風邪症状”というのは、”免疫反応”によるものだからです。
例えば、転んでひざを擦りむいて、赤く腫れたり、ズキズキ痛んだりするのも、外からの異物(細菌等の微生物)と戦う免疫反応です。
傷の深さや、本人の免疫状態(疲労がたまっていたとか)によって、なかなか腫れが引かなかったり、膿が溜まってきたりということもあるかもしれません。
この場合も特別な状況でない限り、どんな細菌によって腫れているかは調べないですよね。
風邪もまさに同じことで、ウィルスという外からの異物に対する免疫反応ですから、症状は似たものになるのです。

風邪でも症状に差があるのは?
これも入ってきたウィルスの種類より、本人の”免疫反応の差”です。
東洋医学では肺も胃腸も、皮膚同様”体の外””体表”と考えます。
呼吸によって、常に外の空気と触れているからです。
それによって様々な異物(微生物や花粉、化学物質など)と触れ、免疫系は自分の体内にないものの顔を覚えたり、性格(特徴)などを記憶します。
この経験値があるほど”免疫が高い”と言われる状態になるのです。
経験値が高ければ対処方法も心得てますので、その場で排除できます。

まるでベテランお巡りさんが、夜中に繁華街でたむろしてた未成年に職質かけて、
「早く帰りなさい」
と諭して帰宅を促す感じです。
小まめに巡回して、小まめに声がけすることで町の安全も、未成年の健全な環境も守られるのと同じで、巡回をさぼったり(異物との対面経験が少ない)声がけをしないで見逃す(免疫を逃れる)状況が続くと、大ごとになる原因を作ります。
数人の未成年ではなく、数十人になっていたり、ただしゃべっていただけでなく、犯罪に手を染めていたり・・・ということになったら、本部から応援を呼ばなくてはならないでしょう。
その状況が、体温が急上昇して頭痛がして、喉が赤く腫れて・・という症状です。

東洋医学から見る風邪
漢方薬は基本的に”病名”で薬を選びません。
しかし保険上の”適応病名”というのがあるため、それに沿って処方されることが多いでしょう。
でも例えば”お腹の風邪”でも、
・冷えて腹痛が起こっているのか
・腸の炎症で熱を発しているから腹痛が起こっているのか
では、処方が全く変わります。
そして発熱や頭痛から始まった風邪でも、喉が痛い⇒関節が痛い⇒咳⇒鼻水と症状が少しずつ変化したり、ひどいと肺炎になったりと人それぞれです。
それも脈診や腹診によって、
・どういう体質の人が
・どんな理由で発熱したか
が分かると、的確な処方が可能になります。

漢方薬って慢性病治療や”ゆっくりじんわり効く”というイメージがありますが、実は的確に処方されると切れ味抜群です。
風邪を始めたした多くの感染症に対処するには、その人の体質に合った免疫を最大限に引き出すのが大切で、そういう意味でも漢方薬はとても適している薬だと思っています。