感染すると太るウィルス



カロリー管理絶対の終焉

肥満は、人だけでなく犬も猫も大きな問題です。



カロリーの摂りすぎや運動不足が肥満を引き起こすのは言うまでもありませんが、一方でどんなにカロリー管理&運動をしても『痩せない』ケースも増えています。



犬猫の場合は、去勢・避妊も肥満の要因になるとされていますが、実際のところあまり相関性を感じません。

ただ内臓や関節に影響を与えるほどの肥満から脱せない状態を『体質のせい』にして放置するわけにもいきません。



少なくとも、カロリー&運動以外に重大な肥満要因があるのではないかと探っていたところ、インド人研究者の興味深い研究を見つけました。


ウィルス感染したのに太る?!

1980年代、ある鶏農場でウィルス感染が蔓延し、多数のニワトリが死にました。


一般的に多くの感染症は、食餌が摂れなくなり衰弱していきます。

しかしこの農場で蔓延した感染症では、死んだニワトリが丸々と太っていたのです。


感染して太ったのか?

太っていたから感染したのか?


1980年代といえば、オーストラリアのウォレン博士とマーシャル博士が胃の中からヘリコバクター・ピロリという細菌を発見した頃です。(発見は1982年。二人のノーベル医学生理学賞受賞は2005年)



胃潰瘍や胃炎は、ストレスやコーヒーのせいで起こるという定説の一角を崩し『細菌感染は潰瘍や炎症の原因にもなる』という流れが出てきた時代でした。


肥満ニワトリのウィルスを探せ!

感染症で死んだ肥満ニワトリの研究のためアメリカへ渡ったニキル・ドゥランダハルは、

・多くのアメリカ人が普通に持っていそうなウィルス

・体重増加に関係しそそう

・ニワトリが罹かるウィルスとも似ているもの 

を探しました。

(本当なら死んだニワトリから培養したものを持って行きたい所でしたが、さすがにそれはアメリカ当局が許可しませんでした)



するとアデノウィルス36型がヒットしました。




アデノウィルスと言えば、熱が出て喉が痛くなり扁桃腺や首のリンパが腫れて・・という風邪の原因となる定番ウィルスです。


お子さんがプールの後、結膜炎などを伴う風邪症状もアデノウィルスによることが多く、別名プール熱なんていう呼ばれ方もしています。


アデノウィルスは1~51型の血清型52型~67型の遺伝子型があります。

1型、2型、5型、6型などが咽頭炎や扁桃腺炎などを起こすタイプで、角結膜炎を起こしていても、咽頭炎など急性の呼吸器症状があれば4型とか、もっと重い呼吸器症状(肺炎など)を伴っていれば3型とか7型とかかなり多くの型が知られています。



問題となった36型はプールなどでよく感染する流行性角結膜炎を起こすタイプです。



これに感染したニワトリは太り、感染させなかったニワトリや同じアデノウィルスでも違う型を感染させたニワトリは太りませんでした。



ニワトリでの実験結果が、ヒトや他の動物でも同じ結果になるとは限りません。



そこでヒトに近いモデルとして、小型の猿マーモセットで実験したところ、やはり感染した猿は太りました。



狂犬病のように、人獣共通感染するウィルスはありますが、一般に人のアデノウィルスは人だけが罹り、犬のアデノウィルスは犬だけが罹ります。



ただニワトリに人工的とはいえヒトアデノウィルスに感染させたことで、”肥満”という同じ結果になったことは注目です。



病気としてのアデノウィルスの症状は出なくても、人と動物の距離が近くなったことにより、ウィルスが行き来しやすくなっているのは間違いないでしょう。



ちなみに犬が罹るイヌアデノウィルス1型(CAV-1)は伝染性肝炎の原因ウィルスとなり、2型(CAV-2)は通称ケンネルコフと言われる、せきや鼻水を伴う伝染性の咽頭気管炎です。



2型はいわゆる”流行り風邪”的なものなので、あまり深刻な状態になることはありませんが、1型は有効な治療薬もなく、感染犬と直接接触がなくても、排せつ物などを通して感染します。


1歳以下の犬が罹ると重篤化しやすく、感染症自体は回復しても暫く角膜の混濁が起こったり、肝臓のダメージ回復に時間がかかったり、治療が長期に渡ることも少なくありません。


そのため狂犬病やジステンバーと並び、コアワクチンに入っています。



まとめ

このようにウィルス感染が、肥満の一つの原因である可能性は出てきましたが、これが原因の全てではありません。


食事管理をしても肥満に悩むアメリカ人の30%から、前述のアデノウィルス36型は検出されましたが、裏を返せば70%の人からは出ていないということです。



正しい食餌と運動は、健康維持の基本です。

そして腸内細菌叢のバランスによっても、太りやすさや性格の差が出る可能性も分かってきています。



生物の体というのは非常に複雑で、どれか一つが絶対的な原因というケースはむしろ稀で、多くの場合複数の原因がからんでいます。



肥満解消には、やはり食餌の改善と運動からスタートすることをお勧めします。



関連ブログ⇒カロリー神話

関連ブログ②⇒うちの子には何グラム食べさせればいい?

関連ブログ③⇒何故吐くのか?


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