
手作り食への不安
これ、手作り食に挑戦しようとしている方からよく聞かれます。
そうでない方も巷にあふれる多くの情報にそう書かれているので、”常識”として思い込んでいるかもしれません。
もちろん私たち人間も、義務教育の中で必要なカロリーや栄養素の勉強をしましたが、その数字通りに食事を摂っている方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。
今日、ビタミンB群はどのくらい摂りましたか?
昨日、鉄分は必要量を上回りましたか?

エナジーバーを食べていれば病気にならない?
エナジードリンクとかエナジーバーと言われるものは、五大栄養素(炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラル)が計算されていて、手早く栄養補給ができるものとして人気があります。
時間のない時や災害時など、一時的に摂るには便利なものでしょう。
しかしそれを一生食べていれば、病気にならず栄養の問題も起こらないでしょうか?
ペットフードにおける総合栄養食とは、そのような存在だと考えています。
その上すでにカロリー神話も崩れ、カロリーで体重管理や健康管理するのは科学的ではなくなっています。
『どんなものから栄養を摂るか』ということが重要視されており、ペットフードの世界でも情報に敏感な飼い主さんは、カロリーやビタミン量などの数字に惑わされず
・どんな原料か
・どこで作られているか
ということに目を向ける方が増えてきていると感じてます。

ビタミン、ミネラルの適正量って?
カロリー以上に、ビタミンやミネラルの不足を心配する方が多いのですが、そもそも合成されたビタミン・ミネラルと、食材から摂取するビタミン・ミネラルとは質が違います。
「食材に含まれるビタミン・ミネラルは調理によって損失するので不足する」
とよく言われますがゼロになるわけではないですよね。
ましてやお味噌汁やスープ、煮込み料理など汁も一緒に食べる料理は、加熱による損失は多少あっても、大きく不足するほどではありません。
むしろ他の食材の栄養素と結合することによって、吸収が良くなることも少なくありません。
また個体による体質や生活環境(寒い地域、暑い地域、湿気が多いなど)、生活習慣によって、ビタミン・ミネラルの消費量は大きく差があります。
ビタミンCを例に挙げると、適正量と言われる量を1とした時に、必要量は1~100まであったという報告があります。(人間でのデータですが)
こんな例を書くと
「だから多めに摂らないと心配。ビタミンCのような水溶性のものは余分にとってもおしっこで排出するから大丈夫」
と思うかもしれません。
しかし先に書いたように食材に含まれる天然ものと、合成ものの体内での動きは同じではありません。
その上、過剰の程度によっては、そんなに都合よく排出されません。

過剰対応は苦手
そもそも生物の体は、不足に対応する機能はいくつも持っていますが、”過剰”に対する機能はほとんどないんですね。
例えば血糖値を上げるホルモンは複数あっても、下げるホルモンはインシュリンしかないように、他の栄養素に関しても不足のバックアップ機能はあっても過剰に入ってきた時に制限や排出する機能は頼りないのです。

そして歯車の一つが壊れると、連動していた機能のバランスが崩れるように、目の前に起こっていることだけでなく、全身を俯瞰して観察することが大切です。
『貧血=鉄分不足』
というような単純な話ではないことは日々のカウンセリングの中で実感しています。

まとめ
というわけで総合栄養食でないと、病気になるとは言えません。
人にとっても食事は、香りとか楽しんで食べることが大切ですよね。
それは犬猫にとっても同じことです。
もちろんおやつなど、好むものだけを与えれば良いという意味ではありません。
健康を維持するために必要な栄養素はありますが、それを摂取するのは加工度の高い総合栄養食からじゃないとダメというわけではないのです。
コツさえ知れば、手作り食でも十分健康を維持できます。
というより手作り食の方が、季節や体調に合わせて調整しやすく、なにより水分が豊富で犬猫本来の食餌に近いのです。

総合栄養食の基準になっている指標はAAFCOという組織が作ったものですが、これは1990年にペットフード業界が設立したものです。
確かにこの30年でペットの寿命は延びましたが、それはワクチンやフィラリア予防薬、そして動物医療の発展も大きいと思います。
逆にこの30年で増えた問題は、ガンや肥満とそれに伴う疾患です。
なんか人間社会と似ていませんか?
犬の死因も半分がガンになり「寿命が延びたからだ」という意見もありますが、4~5歳での発病も珍しくありません。
(過去には2歳という若犬の飼い主さんから食餌のご相談をお受けしたことがあります)
これも人間社会と似ていませんか?
犬猫の食餌を見直すことは、私たちの食事や生活を見直すきっかけにもなると思います。
ワンちゃん、ネコちゃんの健康維持には、まず飼い主さんが健康でいることが大切ですので、一緒に考えてみませんか?